以前のブログで、現代ハタ・ヨーガは古典ヨーガや中世ハタ・ヨーガとは直接関係のない、西洋的体操法とインド各種のヨーガの習合であることをお伝えしました。その歴史性、成り立ちに驚かれた方も多かったことでしょう。
今回は、それに関して別の次元から考えてみましょう。インドではヴェーダの時代の宗教観から後にウパニシャッドの時代を経て、ヨーガの思想が生まれたのは、それまでの思想や仕方に限界があったからで、必然性をもって生み出されたといえるでしょう。
以降、瞑想を中心とした実践によって、至上の境地に至るヨーガの時代となります。その時代のヨーガは精神性をかなり重視していたので、身体技法はさほど進化しませんでした。
しかし、心を一点に集中させていく瞑想を効率的に行うには、祈念のみによる集中よりも、瞑想を力強く誘う手段が必要でした。そこで発達していくのが身体技法です。中世ハタ・ヨーガはこうした中で、古典ヨーガよりも身体観を劇的に進化させています。
その後、西洋列強による大航海時代、植民地時代を経て、西洋と東洋が出会うことになります。インドに出会った西洋人は、インドと西洋の言語の類似性に気づきます。少し話がそれますが、インド人の祖先と西洋人の祖先とは共通の民族だったので、言語も似ているのです。一番下の写真の牛のうなじに掛けられた横木を軛(くびき)といいますが、牛に軛をつけることがyogaの元となった動詞語根√yujの本来の意味です。この語が英語では”yoke”ドイツ語では”Joch”という形で残っています。
そして、西洋の身体表現とヨーガの身体観が習合して、新たなヨーガが生み出されました。これが現代ハタ・ヨーガです。つまり、共通の先祖から生み出されたインドのヨーガと西洋の体操が時を隔てて再度出会ったということなのです。
古代インドの時代からの精神文化史を眺めると、ひとたび新しい思想潮流が起こると、それ以降は、すべて新しい思想に強く影響されて、取り込まれていくという傾向があります。
例えば、古代において起こったヨーガ思想によって、精神性の探求が深められ、瞑想=ヨーガが修行の中心となります。その後、タントリズムの興隆と前後して身体技法が発展し、中世ハタ・ヨーガの身体技法はイスラームやヨーロッパ東部のキリスト教にも取り入れられます。現代ハタ・ヨーガが興ると、ヨーガといえばすべてダイナミックな身体技法の影響を受けます。こういう歴史の繰り返しでした。
古典ヨーガも中世ハタ・ヨーガもその原初的なあり方は残っていないので、次世代のヨーガのなかにしかヨーガは残っていません。現存するヨーガにこそ、ヨーガの心を見出すことができるのです。
現代ハタ・ヨーガが西洋思想のもとにできたものと聞いて驚かれた方も多いでしょうが、今となっては、現代ハタ・ヨーガの中にこそ古典ヨーガも中世ハタ・ヨーガも見出すことができるのです。
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※現代ハタ・ヨーガの成り立ちについては下記の論文が参考になります。
・石井昌幸、永嶋弥生「現代ヨーガの誕生~身体文化におけるグローバルとローカル」『体育の科学』 62(5), pp.349-354, 2012
・伊藤雅之「現代ヨーガの系譜~スピリチュアリティ文化との融合に着目して」『宗教研究』84(4), pp.1255-1256, 2011 PDF by Cinii
・伊藤雅之「現代ヨーガとスピリチュアリティ」『アジア遊学』(84), pp.154-165, 2006



